中世ヨーロッパの生活

時代や地域を越えて共通する人間の性とは

歴史

輝きに惹かれる人びと

はじめに 以前、西洋における光の文化史において、西洋の中世期の人びとが輝きを放つものを好んでいたと記載しました。 記事を書いた後に思ったのは、輝きに惹かれる者は西洋中世人だけではないということです。例えば現代において、ダイヤモンドはより輝き…

西洋の蹄鉄にまつわる小話

はじめに アクセサリー、特にネックレストのモチーフとして「ホースシュー(蹄鉄)」があるのをご存知でしょうか。蹄鉄は幸運を呼び込むシンボルとして知られ、その起源は西洋の民間信仰にあります。「ホースシューhourseshoe」は英語で「馬の靴」という意味…

写本制作所としての修道院

はじめに ローマ・カトリック教会の施設は中世期を通じて大きく2つに分けられます。1つが町に必ず1つある教会堂(聖堂)であり、もう1つが世俗から離れた場所に建設された修道院です。 教会堂とはその大小を問わず、王権と結びついた施設です。西洋になぜキ…

西洋中世期における言葉と文字に宿る霊性

はじめに 科学と魔法の対立にて、科学革命が起こる前と後で人びとの世界に対する認知ベースが変わったことをお話しました。前時代では世界は超自然的な力(≒魔法)によって支配されていると考えられていましたが、後時代からは数字(≒科学)によって支配され…

西洋における光の文化史

はじめに キリスト教における旧約聖書の冒頭には、光と闇に関する象徴的な記述があります。 初めに、神は天地を創造された。地は混沌であって、闇が深淵の面にあり、神の霊が水の面を動いていた。神は言われた。 「光あれ。」 こうして、光があった。神は光…

西洋における光源としての火の利用

はじめに 文明の象徴としての火で、火は人が人らしく暮らすために欠かせないものであると紹介しました。火の光源としての機能によって、人は夜に活動できるようになりました。またその熱源としての機能によって、人はより快適に暮らすための技術を発展させて…

西洋中世期における森の利用と保護への動き

はじめに かつてヨーロッパ大陸には、ローマ帝国というラテン民族が建てた大帝国がありました。しかし476年、北欧から勢力を拡大してきたゲルマン民族によって西ローマ帝国が滅ぼされます(東ローマ帝国は存続する)。この時点で、ヨーロッパ大陸の覇権はゲ…

西洋中世期の森へ入る職業

はじめに 西洋における森の歴史で、西洋人が開墾が進むまでの森を、「異界」と捉えて恐れていたことを紹介しました。しかし森は人々が生活する上で必要な、様々な恵みをもたらします。木材、水、木の実、食用にする動物、蜂蜜など。中世期には、そのような森…

西洋中世期に存続した異教文化

はじめに クリスマスといえばクリスマスツリーです。この木にはモミの木などの常緑樹、英語でいうEvergreen Treeが使用されます。西洋における樹木信仰のなごりで紹介した通り、クリスマスに常緑樹を飾り立てる風習はケルト人やゲルマン人の樹木信仰が基にな…

西洋史における「魔女」とは何か

はじめに 突然ですが、「魔女(Witch)」とは何でしょう。「魔法使い(Wizard)」の「女」であると考えるのは少し安直です。 西洋史的に考えると、「魔女」と「魔法使い」が生まれた経緯、時代背景は大きく異なります。 「魔法使い」とは多神教的な考えから生ま…

なぜ魔法を使うのは女性なのか

はじめに 科学と魔法の対立で説明した通り、魔法とは科学革命が起こる前に人びとが信じていた超自然的な力のことです。 世界の歴史を振り返ると魔法は、言い換えると超自然的な力は、男性より女性と密接に結びついてきました。例えば古代ギリシアにおけるデ…

大地の象徴としての蛇 

はじめに キリスト教における蛇といえば、罪と悪の象徴です。 神が創造した最初の人間アダムと、その妻イヴは、エデンと呼ばれる楽園で暮らしていました。神は、「楽園にあるどの果実でも食べていいが、ただ一つ、この木の果実だけは食べてはいけない」と二…

西洋中世期のアウトサイダー

はじめに 西洋における森の歴史で、森の開墾が進むまでは、中世の人びとは共同体の外を「異界」ととらえていたことを説明しました。異界とは、神々や精霊、悪霊の住む世界のことです。 基本的に人びとは異界を避けて生活していましたが、なかには人間の世界…

西洋中世期における旅する商人

はじめに 国民的RPGゲームの『ドラゴンクエスト4』には、武器商人のトルネコというキャラクターが登場します。妻と幼い息子と暮らす、中年の太ったおじさんで、世界を救うにはちょっと頼りない……と言ったらかわいそうですが、ザ・英雄というタイプではありま…

歴史学者はどのように過去の出来事を知るのか

はじめに E.H. カー『歴史とは何か』。 大学で歴史学を学ぶ人がたいてい読む、歴史学の入門本です。その本に出てくる有名な言葉が「歴史とは現在と過去との絶え間ない対話である」です。 今回は、歴史学者がどのように過去の出来事を知るのか、文字史料と口…

異界への入口

はじめに 西洋における森の歴史で西洋人が昔、森を「異界」だと捉えていたことを説明しました。異界とは、人間が住む世界とは別の世界、神々や精霊や悪霊が住む世界のことです。人びとは基本的に、異界を恐れ、出来る限り近づかないようにしていました。 し…

西洋における樹木信仰のなごり

はじめに イギリスにおける魔法の歴史で、ケルト人とゲルマン人が樹木を神聖視していたことを説明しました。とくにゲルマン神話では、世界樹ユグラドシルというトネリコの巨木が神話の根幹となっています。 世界樹ユグラドシル 木を神聖視する慣習は、ケルト…

西洋中世の川と都市の発展

はじめに 人類の文明発展の礎となった四大文明は、川を中心として発展しました。四大文明とは、メソポタミア文明、エジプト文明、インダス文明、黄河文明の四つの文明を指します。それぞれ、以下の表に記載された川を中心に発展しました。 四大文明 人間にと…

西洋における道の文化史

はじめに 道の歴史的な役割で、道が古来どのような機能を持ってきたかを説明しました。道は人・物・情報を運ぶ機能を持ち、道を整備する国は経済的・軍事的に優位に立てるのでしたね。 今回は、西洋における道の文化史について紹介します。 道は自分たちの共…

西洋におけるアジール(例)

はじめに 前回の記事、西洋におけるアジール(概要)で、アジールの概要を説明しました。 アジールとは、「聖域」を意味する言葉で、その領域では人の統治権力が及ばないと説明しました。なぜならアジールは人ではなく、神々などの超自然的な存在が支配する…

西洋におけるアジール(概要)

はじめに 西洋における森の歴史で、アジールについて触れました。昔は森が神々・精霊・悪霊の世界「異界」ととらえられており、人びとは森へ入る(村の柵を超える)ことを恐れていたと説明しました。そして「異界」ととらえられていた時代に、森にはアジール…

絵画から知る西洋の中世と近世の違い

はじめに 歴史学における時代区分は、「古代」「中世」「近世」「近代」「現代」で表されます。 紛らわしいのは近世と近代です。近代と言うには言い過ぎだけれど、明らかに中世とは違う。そんな中間時代を近世と呼びます。西洋では具体的には、ルネサンス、…

廃墟はなぜ美しいのか

はじめに 「美学」という言葉を初めて聞いたのは学生のころでした。どうやら哲学の一領域らしい。その時は、「美しくなるための方法を研究するのかな…でもなぜ哲学科のジャンル?」などと思ったものです。哲学科の女の子たちがやたらオシャレで可愛かったの…

西洋になぜキリスト教が浸透したのか

はじめに 西洋における森の歴史で、森深い地域で最初に生まれる宗教は多神教であると述べました。たとえば、まだ西洋が森深かったころの民族、ケルト人は木々に宿る精霊や妖精を信じていましたし、日本人も古くから、あらゆる自然に神が宿ると信じてきました…

青が西洋で人気の色になるまで

はじめに 人の好みというのは、文化的背景に左右されます。たとえば日本人は紅葉を楽しむのが好きですが、外国人からすると「なぜ枯れた葉を見にでかけるのか理解できない…」と思うことがあるようです。 色の好みについても同じです。「この色は良い色だ」と…

遠景は空の色を映す

はじめに 西洋における森の歴史で、「風景画」という絵画のジャンルが確立したのは17世紀ごろだとお話しました。簡単に言うと、森が「異界」でも「征服すべきもの」でもなく、「癒し」としてとらえられるようになってからです。 西洋絵画といったらルノワー…

語源からたどる西洋と日本の「政治」の違い

はじめに まことの名を知らなければ魔法を使えないに続き、語源シリーズです。そろそろ、ギリシア語とラテン語の本格的な辞書が欲しくなってきますね。 今回は、西洋における「politics(政治)」と、日本における「政治」が、語源的に異なる思想から成り立…

文明の象徴としての火

はじめに 西洋における森の歴史で、人の住む村は文明・人工の世界、対して森は原始・自然の世界だと紹介しました。文明と自然の対立は、火と森という象徴の対立に置き換えられます。火とは不思議なもので、「自然」から生じる現象であるにもかかわらず、人を…

西洋における森の歴史

はじめに イギリスにおける魔法の歴史で、ケルト人が木々やそこに宿る精霊、妖精を信じていたとお話しました。これはとても自然な話です。日本人も古くから、あらゆる自然に神が宿ると信じてきました。世界各地どこでも、森深い地域で最初に生まれる信仰は多…

イギリスにおける魔法の歴史

はじめに ファンタジーとおとぎ話の違いで説明した通り、ファンタジー文学発祥の地はイギリスです。さらにいえば、「小説」という娯楽自体、イギリスで生まれました。ファンタジーとは、「魔法がでてくる空想の物語」です。 ファンタジージャンルの小説が生…