中世ヨーロッパの生活

時代や地域を越えて共通する人間の性とは

松江【鳥取/島根旅行2022-④】

はじめに

前回島根県足立美術館玉造温泉へ行った話をしました。4日目は、同じく島根県松江市を観光した話です。

当初、松江へ行く予定はなかったのですが、松江城は全国に5つしかない国宝の城の1つだそうで、母に絶対行くべきと勧められました。感動するから、と。

そこで、松江について調べて見ると、お茶と和菓子の文化があることが分かりました。高貴な人が暮らす城の近くではお菓子の文化が栄えがちなので(国は違うけれどトルコのイスタンブールもそうですよね)、和菓子は当然という感じですが、お茶は珍しいです。さらに調べてみると、松江藩7代目藩主は「不昧公ふまいこう」と呼ばれた茶人であり、茶の湯文化を奨励したことが分かりました。そのため、松江ではさまざまな所で茶の湯体験をすることができます。

そして、全国的にも夕日が美しいことで有名な宍道湖もあり、いろいろと楽しめそうな場所があるため、松江で1日過ごすことになりました。

目次

玉造温泉

旅館の中庭

玉造温泉の老舗旅館「佳翠苑皆実」で、朝露天風呂を楽しんだ我々は、昨晩は暗くてよく見えなかった中庭を見て回りました。

東屋(あずまや)だ!

東屋もあって素敵です。ここでくつろぐ時間があれば最高なのですが、ささっと通り過ぎます。庭のなかに東屋を配置する庭園文化は、西洋にも存在し、西洋では「ガゼボ」と呼ばれます。おいしい朝食を済ませたあと、10時発のシャトルバスに乗り、玉造温泉駅へ向かいました。

松江城

樹々の向こうに見える松江城

さて、松江駅に着いた我々は、自転車をレンタルすることにしました。今日の予定は松江城月照寺宍道湖の夕日なので、効率的に回るためにも自転車は便利です。しかし、日の入り時刻である17:30以降は道が暗くて事故が起きやすいため、日の入り前に自転車を返すように言われます。 ということは、夕日を見るには自転車を一度返してから、宍道湖へ向かう必要がありそうです。

地図に従って自転車を走らせると、すぐに松江城に着きました。門の前にある駐車場で、自転車を引きながら駐輪場を探してうろうろしていると、「お姉さん!駐輪場?」と駐車場のスタッフさんに尋ねられます。はい、と返事をすると、「入って右にあるよ」と教えてくれました。

え?自転車を城の敷地内にいれていいのか……?と友達と顔を見合わせながらも、城の門をくぐり、道なりに進んでいくと、自転車が数台停められた草むらがありました。そこに自転車を停め、天守閣へ至る階段を登っていきます。

明治35年に建てられた「興雲閣」

階段を登っていくと、左手に洋風の建物が現れました。明治天皇をお迎えするために建てられた建物で、実際には明治天皇はいらっしゃらなかったようですが、大正天皇が皇太子時代に宿泊に使用したとのことです。中は無料で見学できます。

2階はホールになっている

真紅の絨毯が豪華です。1階には、一息つけるカフェがありました。

松江城天守

私たちが「日本のお城」としてイメージするものは、天守閣(最も景色がよい場所に建てられた、見張りと最後の防衛の役割を果たす建物)です。なぜなら、ほとんどのお城で天守閣しか現存していないから。私は少し前まで、天守閣の内部を見て回るとき、「こんな狭い場所では数人しか暮らせないけど、これがお城なのか?」などと馬鹿なことを考えていました。普段、天守閣にいるのは見張りの兵士だけで、城主や家来など他の人たちは、別の建物に暮らしているのです。

しかし!!

松江城天守閣は地下つきの5階建てで、数十人....…もっといえば百人以上いの人が暮らせそうな広さでした。こんなに広く立派な天守閣があることに驚きました。

1階。広すぎる。

さらに驚いたのは、天守閣の地下に巨大な井戸があることです。つまり、もし敵に攻められて、最後の砦である天守閣に籠ることになっても、水に困らないのです!!なんて実用的で有能な天守閣。これは国宝なのに納得です。

地下にある井戸

広すぎる、広すぎる....…と感動しながらついに最上階に到りました。360度、地形がとてもよく見えます。敵が攻めてきたらすぐに分かりますね。

天守閣5階からの眺め。宍道湖が見える。

別の角度

例えば向こうの山を見ていて、(敵はそんなヘマをしないと思うが)炊煙の煙があがっていたら、「むむっ!曲者か?」となるんですね。他には、(敵はそんなヘマをしないと思うが)夜に松明なんて灯していたら、「むむっ!あの光は何だ?誰かいるのか?」となるんですね。空想が楽しい。

大満足して、天守閣を後にした我々は、下に降りていきます。すると、目の前を歩いていた男女2人組のほうの、女性のほうが「じゃあ、私こっちなんで。ありがとうございました」と男性に言って、一人でさっさと右の道を行きます。男性は困惑した、ややがっかりとした顔で、まっすぐに伸びた道を進んでいきます。

私と友達は顔を見合わせます。

「えっ……あの2人ってカップルじゃなかったの?」(小声)

「敬語だし、マッチングアプリで出会ってデートしただけじゃない?」(小声)

「デートが松江城!?渋すぎる……」

「"ない"と思ってもせめて下の門まで一緒に行くよね。ここで別れるなんて、相当いやだったんだね……」

マッチングアプリこわい....…」

という事件を目の当たりにした我々は、男性の心情を思いながら、石垣沿いを歩きます。

石垣も立派

実は、天守閣に入る前に、小型犬を5匹連れた一人のお婆さんがいました。犬を撫でさせてもらいながら話を聞くと、「(天守閣を見学している)息子を待っている」とのことで、母子で旅行しているようでした。我々が天守閣の最上階から下を見たとき、ちょうど息子(お婆さんの息子なのでおじさん)が戻ってきたようで、犬たちが狂ったように喜んでいました。そして、天守閣を背後に、2人と5匹並んで写真を撮ってもらっていました。きっと親孝行の旅行なんでしょうね。

我々が石垣の隙間からのぞく天守閣を撮っていると、「一緒に撮りましょうか?」と言ってくれたのが、その犬たちのご主人でした。友達と2人並んで写真を撮ってもらっています。その間にも、犬たちがじーっとご主人のほうを見ていました(リードはお婆さんが握っている)。かわいかった。

馬洗池

個人的にすごく気になったのが、敷地内にある馬洗池でした。その名の通り、汚れた馬を洗うための池です。例えば馬に乗って長旅をしてきたときなど、わざわざ水を汲んでこなくても、ちょうどよい池が敷地内にあるのは、とても便利だと思いました。松江城は本当に、さまざまな設備が整っています。

城のまわりの堀。少し葉が色づいている

日本三大そばの一つ、出雲そば

昼ごはんは、日本三大そばの一つである、出雲そばを食べました。「割子そば」とも呼ばれるのは、丸い器が「割子」という名称だからです。昔ながらの割子そばは、つゆを次の割子に移しながら食べます。しかし現代では、それぞれの割子で薬味などの味付けを変えるのが主流なようです。

旅行から帰ったあとに「島根行ってきた」と話すと、島根出身の人に「先に言ってくれればおいしい蕎麦屋おしえたのに!」と言われました。なるほど、島根県のそばは香川県のうどんのようなステータスなんですね。たしかに、うどんにもおいしい店とそうでない店があるからな。

月照寺

月照寺の受付

自転車をさーっと走らせ、松江藩主初代~9代目のお墓がある、月照寺にやってきました。ここではお抹茶体験ができるため、それが主目的でした。拝観料500円にプラス500円をお支払いすると、お抹茶体験のチケットがもらえます。まずは、お寺のなかを散策します。

初代、松平直政公のお墓。

松平藩初代藩主の直正公は、徳川家康の孫にあたる人です。初代のお墓は、境内のなかにある他の藩主のお墓のなかでも、最も広く敷地が取られて豪華です。門をくぐり敷地に入ると、睡蓮が浮かぶ堀に橋が架かっていました。橋や川はこの世とあの世をつなぐ物・分ける物を象徴するため、ここから先は異界(あの世)であることを意味しているのだろうと思います。鳥居の向こうにあるお墓に到るまでは、両側に灯篭がずらりと並び、荘厳な景色でした。

初代藩主のお墓からは、松江城が見えるようになっている

月照寺の受付の人によると、初代藩主のお墓は、松江城が見える位置を選んでつくられたようです。振り返ると、たしかに遠くに松江城が見えます。

他の藩主のお墓も、敷地内は同じような構図(堀に左右の灯篭)になっていました。

寿蔵碑。小泉八雲の随筆に出てくる「月照寺の大亀」

小泉八雲ファンの方に朗報!月照寺には、小泉八雲の随筆に出てくるという、大亀がいます。私は読んだことがないので、受付の方が「亀は今でもときどき暴れるようです」とボケてくれたのに反応できませんでした。頭をなでると長生きできるという言い伝えがあり、友達と一緒に頭をなでてきました。

苔むしている

受付がある本堂に戻り、中を見て回りました。本堂には阿弥陀如来が鎮座しています。そして、奥のほうに茶室がありました。茶室の近くに、千利休から賜ったという茶器がありました。

茶室の隣にある流し。

そうこうしている間に、受付の女性がお抹茶を用意してくれました。受付のすぐ後ろの、開かれた畳の間でいただきます。本来、お抹茶はお盆で出すものではないようですが、コロナ禍のためすみません、とのことでした。障子の向こうに美しい裏庭が見えます。

お茶が飲める間

床の間の前に座っていただきます

実は、茶道は初めてではなく、通っていた幼稚園が日本の文化を学ぶ幼稚園で、そこで何度か茶道の授業を受けたことがあります。茶道の授業は印象的だったので、いろんなことを覚えています。

先生「今日はお茶室に行きますよ。お部屋に入るとき、こんなふうにどたどた入っていいかな?(どたどたアクション)」

園児たち「だめでーす!」

と言ったにもかかわらず、どたどた入って怒られたこととか。お茶菓子として出された人形焼きの名称が分からなかったため、「おじいさんの顔をしたお菓子食べた」と母親に報告して笑われたこととか。

茶道を体験したのは、その頃以来で、今になっていろんな良さが分かり新鮮でした。

まず改めて気づいたのは、日本家屋は、正座したときの視点で美しく見えるようにできているということです。例えば庭の景色は、立ったまま見るときより、正座して見るときのほうが、角度的に美しく見えます。

そしてお茶を飲んでいるときの静けさがとてもよかったです。まったく何も聞こえないわけではなく、小鳥のさえずり、虫の鳴き声などが聞こえてきます。自分と自然との境界があいまいになって、溶け込んでいるような感覚になりました。私と友達は、一言も言葉を発さずに、お茶を飲みました。

お菓子は求肥と白あんを重ねてひねったもの。

干菓子としていただいたのは、松江の老舗の和菓子屋「風流堂」がつくっている「路芝みちしば」という名称のお菓子でした。春の若草に雪が積もっているさまをイメージしたお菓子だそうです。なんて風流。見た目も素敵ですが、味もおいしく、お土産として買うため、風流堂へ行くことにしました。

裏庭のようす

「バスの時間は大丈夫ですか?」と受付の女性に訊かれ、「自転車なので大丈夫です!」と答えると「うふふ、お若いから」と言われました。というわけで自転車を走らせ、風流堂までGO。

風流堂では、次兄に「路芝」のお土産を買いました。お茶だけではなく、コーヒーにあわせても合うお菓子だそうです。製造日から二週間もつようなので、一駅隣に住んでる次兄には余裕で渡しにいけます。この前ディ○ニーのお土産でメープルクッキーをもらったのでお返しとして。

友達が「島根はお酒がおいしいから酒蔵に行きたい」というので、米田酒造という酒蔵に行ってみます。そこで商品を選びながら、酒蔵の店員さんとお喋りをしました。

私「鳥取→島根の順で旅行したんですけど、島根のほうがたくさん人がいますね」

店員「そりゃ、島根には出雲大社がありますから!」(自慢げ)

あ、これは島根の人は鳥取に対抗心を燃やしているやつだ。しかも島根のほうがすごいぞアピールしてきた(笑)。

友達は店主の人にいろいろと話を聞いたすえ、4本の日本酒を買いました。倉吉でも買ってたし、どんだけ飲むんだ(1人で飲むわけではなく、酒好き仲間と飲むそうです)。

Oh, rainbow!

自転車を返すため、宍道湖大橋を渡っているとき、虹がかかっていることに気づきました。通りすがりの外国人(ビジネスマン)二人組が"Oh, rainbow!"と言って写真を撮っています。午前中は雨がぱらついていましたが、止んで本当によかったです。夕日が見れそうです。

宍道湖

日没が近づいてるぞ、走れメロス

自転車を返した我々は、徒歩で宍道湖の夕日絶景スポットへ向かいます。ひとまず宍道湖の湖畔まで出て、そこから湖にそって左周りに歩いていきます。すでに湖面には黄金の帯ができており、大変美しいです。

ぴょこぴょこ兎。

途中、うさぎのオブジェがありました。因幡の白兎に由来しているオブジェでしょう。

嫁ヶ島を手前に

ついに、夕日絶景スポットに到着しました。たくさんの人が集まっており、マシンガンみたいなすごいカメラを三脚で立てている人もいます。上図の通り、きれいに撮影できました!

空の色が徐々に変わっていく

夕日が沈むと、徐々に人がはけていきます。我々は湖畔の階段に座り、30分ほど、空と湖の色が変わるさまを眺めていました。

それから、駅までバスで帰ろうとしましたが、バス停で待っていても一向にバスが来ません。仕方がないので、暗い高架沿いの道を20分ほど歩き、松江駅へ向かいました。そこから今日泊まるホテルがある、出雲市駅へ移動しました。

ホテルでチェックインをした後、地酒が飲める居酒屋に行き、夜ごはんとしました。友達が地酒を注文したので、私はまたおちょこ一杯だけ分けてもらいました。おいしかったです。

おわりに

今回は松江をめぐった話でした。5日間の旅行のなかで、最も色々なことを経験できた、充実した日だったと思います。

ちなみに、旅行から帰ったあと、次兄に「路芝」のお土産を渡しにいきました。そのとき、ディ○ニーに一緒に行って喧嘩をした彼女とはどうなったのか尋ねてみると、「別れた」とのことでした。そのため、私はそれから1カ月ほど、タッパーに入れたプーさんのメープルクッキーを食べるときにいつも、「別れたんだよな……」と思い出すことになりました。この前やっと食べ終わりました。

次回はいよいよ最終日、出雲大社へ行った話をします。

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